ueo6110r5's blog

iPhoneアプリをつくったり...

第一話:ちょっとしたぜいたく

今週のお題「ちょっとしたぜいたく」


会社の給料日は毎月5日。あまり聞かない日付けだと思う。
友人知人はみな25日。その週末に呑みに行こう!と誘われてもわたしにとっては給料日前。
大手には一歩も二歩も及ばぬ財務事情の中小企業に勤める身としては…仕事もそれなりに忙しく、断ることが数度続いた。
就職して一年たつころに声がかからなくなったのはそのせいなのか、大学の友人はその程度の仲だと思えばいいのか。
一年以上勤務した会社で、気軽に呑みに行こうと言える同僚がいないことを考えると、わたしになにか問題があるのかもしれない。なんてことを思ったり思わなかったり。

今日はせっかくの給料日。ちょっとしたぜいたくをしたい気分になった。

会社は新宿のはずれにある。最寄りの西武新宿駅は、いろんな意味で有名な歌舞伎町のすぐそば。あの界隈の賑やかさは嫌いではないけれど、声を掛けてくる店員さんが多くてひとりでは歩きづらくて少し苦手だ。
けれど平日の歌舞伎町は、まっすぐ歩けないほどの人混みではなかった。駅を通り過ぎてしばらく歩いても声をかけられないのは、週末より店員さんが少ないのか、わたしの顔がよほどけわしかったのか。
なんだか泣きだしたいような気分もあったから。

新宿区役所あたりまであてもなく歩いて、ある店を思い出した。
社会人になりたての頃、同じくなりたての大学の友人に連れてもらったBar。さんざん飲み食いしたあとで、ここのナポリタンは格別に旨いんだよ!と、お酒を頼む前にオーダーしたナポリタンはたしかに美味しかった。

…あのナポリタンが食べたいな。

ファミレスなら680円で食べられるスパゲティが、あのBarだと1000円はしたんじゃなかったかな。でも食べてみたい。今日はちょっとぜいたくをしたい気分なんだから。

区役所を通り過ぎ交差点を渡って新宿三丁目へ。ちゃんとたどりつけるか不安だったけど、ピカピカ派手に光る看板を見つけて思い出した。その目立つ看板の近くにある目立たない看板が示す地下への入り口。ちょっと急な階段を下りたところにあるBarだった。

「いらっしゃいませ」

落ち着いたよく通る声のマスターがカウンターの席に呼んでくれた。
小さなテーブルもあるけれど、ほかにお客さんはいない。

「お久しぶりですね、なにになさいます?」

覚えてるの?
1年以上まえに1度来たきりなんだけど?
マスターをじっと見てしまって、一見若そうだけど年齢不詳な印象のマスターは何歳なんだろう、って関係のないことを思ってしまった。よくする挨拶なのかな。
ああちがう、そんなことを考えてる場合じゃない。

「ナ、ナポリタン、お願いします」

口をついて出てしまった。お酒を頼むまえに言ってしまった…!

<次のお題へ続きます…